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第152回 ルールは変わっても、変わらない本質は何か?

フィギュアスケートの採点ルールが変わったそうです。恐らく、選手とその関係者たちは、次のプログラムをどういう構成でいくのか、必死に考えていると想像します。フィギュアスケートについては詳しくありませんが、ルールが変わってラッキーな選手もいれば、上位に入賞するために様々な面での変更を強いられる選手もいるのではないかと思います。

そう考えたとき、不思議な感覚になりました。どんなにルールが変わっても、選手自身の本質は変わらない。変わるのは、たまたまそのときに「ルール」と認定された尺度に基づいて下される評価だけ。それなのに大きな騒ぎになっている、という状況に既視感を覚えたからです。

もちろん、オリンピックレベルでメダルと獲得するという話になると、関係者が多く、動くお金が半端ではない大きさでしょうから、ルールが変わったけど騒ぎもしないという方が、違和感があると思います。ただ、日々生活をしたり、ビジネスをしたりしていくうえでは、「ルール」の変更と「本質」の関係を意識した上で動くことが、大切なのではないかと思うのです。


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IT業界に長らく身を置くなかで、この十数年の間に、何度も「これが新しいトレンド、これからのルールはこうなる」といった大騒ぎがありました。しかし、その多くは今となっては誰も見向きもしない(忘れ去られている)こととなっています。新しいデファクトスタンダードとなっていることは少数です。

あるトレンドを新しいルールと判断し、メイン製品を根本的に新しく作り直し、結局そのことが元で多くのユーザーを失い、全盛期の勢いは見る影もなくなってしまった企業がありました。 一方で、いち早く新しいルールに着目し、成長していった企業もあります。

ルール変更やトレンドと、自分たち自身の本質、そして自分たちが対峙しているコトやモノの本質の関係を冷静に分析できたかどうかが、成否の鍵を握っていたのだと思います。

「新しいルールやトレンドへの対応に乗り遅れたら、ビジネスでは致命的だ」という立ち位置も理解できます。ルールの変更やトレンドの変化を敏感に察知し、理解することは重要であることに異論はありません。しかし、そのことと、そのルール変更への対応にとにかく飛びつくことが「勝ち続ける」ための最善策だ、というのは別の話でしょう。

IT業界はもちろん人事の世界でも、様々なキーワードが出てきては、「これからの人事は○○であるべき」という"うねり"が生まれ、そのことを話題にするセミナーや勉強会に多くの人が集まると聞いています。

繰り返しになりますが、新しい流れを知っておくことはとても重要です。

しかし、刺激的で新しい情報が後から後から出てくる中で、自分たちの本質は何か、自分たちが対峙するものの本質は何かについて、とことん突き詰められていないと、どこかで大きな落とし穴に落ちるのではないかと思うのです。


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私たちのお客様で、人材マネジメントシステムやそこで管理しているデータを経営に資する形で使いこなしていている人事の方々がいらっしゃいます。その方々の凄さは、自社の組織や人材について、一般論を押さえながらも流されず、それらととことん向かいあい、その本質を理解し"続けよう"として(不変のものではないという自覚を持って)いることです。

その活動は、傍から見ているかぎりではとても地味で地道ですが、真の力強さがあります。それを基に、最新の技術やルールはデファクトになっていきそうなので受けいれてみた方がいいのか、そうとも言い切れないので過剰反応しないで様子をみた方がいいのか、短時間でほぼ正しく判断することができます。
すぐに判断できないときには、仮説を立てて意図を以て試すこともできます。

世の中では、これまで考えられなかったようなことが次々と起こっています。こういう時だからこそ、
仕事についても、プライベートについても、コトやモノの本質について、じっくり考えてみることが重要なのではないかと、強く感じる次第です。



(2018年8月7日)

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