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第158回 子供の咀嚼。「^_^」と「:D」。初対面の人のうなずき

保育士さんがマスクをするようになって、小さな子供たちに変化がでている、 というニュースを見ました。離乳食を食べるときに、噛まずに飲み込んで しまう子供が増えたというのです。実は、離乳食を食べ始めるとき、 保育士さんが「もぐもぐしましょう」などと言いながら、実際に口を動かす 様子を見て、それを真似ることで咀嚼を覚えていた、ということでした。 感染に注意しながら、口の動きを見せるようにしたら、皆きちっと咀嚼でき るようになったとのこと。

聴覚に障碍がある方々も、手話や聞くことができる音などだけではなく、 口の動きや表情を組み合わせて、コミュニケーションを成立させていると いうことで、ほとんどの人たちがマスクをする今、苦労することが多いと 聞きました。

以前海外(英語圏)で暮らしていたときに、ショートメッセージを送る際の 絵文字が、日本と異なることに気がつきました。<笑い>の絵文字、日本では 「^_^」でしたが、英語圏では「:D」。前者は目で、後者は口で、笑った表情 を表しています。一部の国ではマスクをしたくないという人が多いという ニュースを目にします。口が隠れてしまうことで、感情を表現できない相手を 理解できない、という不安や恐怖が、日本人が想像している以上に大きいのかも しれません。
(そもそもこうした絵文字は古い、という話もありますが・・・)

先日、初めてオンラインセミナーをライブで開催しました。対面型セミナーは 数多く行ってきましたが、聞き手がいない状態でカメラにむかって一人で話続ける のは初めて。聞き手の反応がまったくわからないので、話のペースやトーンが 単調になりがちになります。反応を想像して、ふと不安な気持ちにもなりました。 しかし、どう修正したらいいかはわからない。。。考えていた以上に、聞き手の 方々の反応や表情をみながら、自分の話の調子を整えていたんだ、ということに 気がつかされました。

初体験のオンラインセミナーでは、スタジオで音声調整をしてくれていた外部 スタッフ(当日初対面)が、時々でしたが私の話に軽くうなずいてくれている姿が、 大きな救いとなって、45分間、慌てずに話続けることができました。

これからの人とのコミュニケーション、情報の伝え方は、今までの延長で考えて はいられないのだ、と感じることが多い毎日です。今まで当たり前だと思って いたことが、どれほど貴重なことだったのかを、痛感させられます。

これからどのような方向に終息していくのか、まったく見えませんが、マスクを しながらも、目や手、体等を使ってどう自分を表現するのか。新しい能力(感性?) を身に着ける必要がありそうです。

マスクなしでコミュニケーションできるときは自分の表情を意識したい、相手の 顔が見えないときにはできるかぎりの言葉や表現を尽くしていきたい、そんな 風に思ったりもしています。

(2020年6月30日)
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