第8回 ビジネスが求めるものにどうに対応していくかという発想

何度も申し上げていますが、2007年10月10日から12日までの3日間、HR Technology2007という、世界最大級の人事とITをテーマにしたコンファレンス+展示会が開催されました。(しつこくて申し訳ありませんが、初めての方のために再度。詳しくは、→ http://www.hrtechnologyconference.com/)
これまで、3回に渡って 1.「総論」 2.「人事データの活用について」 3.「Talent Managementとは」ということについてご報告してきました。
今回は、「人事とIT(技術)の関係」についてご報告したいと思います。

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たとえば、「人事関連の一連のシステムは、ひとつの会社のもので揃えた方がいいですよ」と言われたと思ったら、
「各現場が一番使いやすいものを選択して、連携させる方が結果的に使われるシステムになります」言われたり。
「これからは、パッケージをノンカスタマイズで使うのがトレンドですよ」という人もいれば、
「自社に本当に合うシステムを作るのであれば、カスタマイズは前提です」という声もある。
人事情報システムの導入を検討されたことがある方であれば、上記のようなことを耳にされたことがあるのではないでしょうか?
今、人事情報システムの導入を考えられているとしたら、上記のような対立する考え方のどちらを取るべきなのか、頭を悩ませていらっしゃるかもしれません。
いったいどの意見が「正しい」のでしょうか。

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人事とITの関係の本質を見直す

いくつかのセッションの中で、「人事とIT(技術)の関係」に関して印象に残るいくつかのコメントがありました。それらは、人事システム導入となったときに直面しがちな、上述の問いについての大切なヒントとなるものでした。
どんなセッションでどのようなことが言われたのか。

第一日目 11:00-12:15 「Talent Management Panel」にて
(Talent Managementシステムのユーザー企業の人事責任者が、自社のシステム活用について話をし、今後の進むべき方向について話をするセッション)
Talent Managementについては、前回のメールマガジンをご参照ください。
「どのように製品を導入するかではなく、ビジネスが求めるものにどのように対応していくか、という発想で望むことが重要。」

第二日目 8:30- 9:45 「Industry Analyst Panel」にて

(2007年の人事関連の技術やサービスについて4人のアナリストたちが振り返り、2008年の方向性と、現在市場に発表されているシステムについて批評を行うセッション)
「テクノロジーを語る前に、人事のプロセスや戦略を考えることが大事。」
「システムがゼロからすべてを提供してくれるなんてことはない。」
「人事戦略が技術に規制されてはいけない。」

第二日目 13:45- 15:00 「Visionary of HR Technology」にて

(独立系システムコンサルタントが、これからの人事とITについて分析・予測するセッション)
「まずはシステムを考える前に、自社にとって何がビジネスを成功に導いているのかを知ることからはじめなければ。」
「HRパッケージベンダーがすべての分野について『ベストプラクティス』を持っているとは限らない。過信・盲信しないこと。」
いかがでしょうか?

パッケージベンダーは自社の製品をできるだけ沢山売りたい

アメリカでも日本でも同じことだと思いますが、パッケージ製品を開発・販売している会社は、いかに自社の製品が優れていて、それらを使えばどんなに夢のような世界が待っているか。あの手この手で情報発信しています。

そこで出てくるのが、

「人事関連の一連のシステムは、ひとつの会社のもので揃えた方がいいですよ」だったり、

それに相反する、「各現場が一番使いやすいものを選択して、連携させる方が結果的に使われるシステムになります」だったりします。

この考え方は私たちの業界で、ERP型(Enterprise Resource Planning:統合型アプリケーション・もしくはSuite/スイート型) 対  Best of Breed (個別最適の連携型) と捉えられて、長い間どちらが良いのか議論されています。

また、

「これからは、パッケージをノンカスタマイズで使うのがベストですよ」にしても、

「自社に本当に合うシステムを作るのであれば、カスタマイズは前提です」にしても、

売る側が、「個別開発」をビジネスに組み込みたいか、組み込みたくないかといった「売る側の論理」からスタートしているケースもあります。

もちろん、ほとんどの場合、それらの背景には「そうした売り方が顧客のためになる!」という信念や判断があるとは思います。(そう信じたい。)

が、そうだとしても、それを信じ、判断しているのは「作る側」「売る側」の人たちであることには変わりありません。

「自社のビジネス」がすべての「真ん中」にいるべき

そんな中、ますます高度に、様々なことができるようになっていくパッケージ製品に対して、「使う側の主体性を忘れないでいよう!」という意識が強まって、シカゴで上記のような発言が重なったのではないかと思います。

そして、人事のシステムの導入も活用も、「いかにビジネスの成功に役立てるのか」というところから出発しようと。

その結果として、状況によってはERP型(スイート型)の製品が自社にとってベストかもしれませんし、Best of Breed型のソリューションが正解かもしれません。

業務によってはパッケージに合わせて業務を変更し、ノンカスタマイズで運用していくことがビジネスへの貢献になるかもしれませんし、システムが自社の戦略に合わせていくという発想を取るべき場面もあるはずです。

いずれもしても、その判断の基準は、各会社のビジネスにとって何がベストか、ということ。

決して「売る側」が信じる「一般論」が優先しないはずです。(結果は同じところに落ち着いたとしても、そのプロセスは非常に重要。)

日本よりもパッケージ製品の普及率が高いと言われるアメリカ。

そこでシステムを使ってきた人たちが、改めて「使う側の主体性」の重要性を確認しているという状況から、ユーザーもメーカーも学ぶことがあるように思います。

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今回で、HR Technolog2007の報告は終わりです。

次回以降も人事やITに関する新しい流れや発見をお伝えしていきます。

(2007年12月7日)

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