第101回 ひとつの失敗の一般化の功罪

「え、まだこんなところにいるの・・・ 別ルートなんて通らなければよかった」

 

以前、空港に車で急いでいるとき、いつも通る道が混んでいたので、少し距離は長いかもしれないけれど信号

がほとんどないからと、勧められた別ルートを走ったことがありました。

 

そして、元の道に戻ってきたとき、想像していた地点よりもあまりに手前までしか移動できておらず、非常にがっ

かりしたのを鮮明に覚えています。

それ以来、私は自分が通ったことのないルートを使うことを基本的に避けるようになりました。

 

 

あるお客様が「○○○という形式のシステムの導入には非常に慎重になっています」と言われているという話を

同僚から聞いたことがあります。以前、そうした形式のシステムと導入したときに、営業担当者が「できる」

と言っていたことで、できないことが多く、対応も導入が決まった瞬間に豹変し、非常に不愉快な経験をしたよ

うです。だから、もうこりごりだと。

 

 

この話を聞いたとき、自分自身の経験も合わせて、「ひとつの失敗の一般化」の功罪について考えさせられまし

た。もちろん、ひとつの失敗の経験をもとに、次に失敗しないように備えるということは賢明な態度です。

 

しかしその反面、ひとつの失敗のみを基に、「別ルートを試してみる」とか「○○○というシステムを導入する」と

いった行為自体をすべて排除してしまうことは、自らの可能性を狭める、と感じたのです。積極的な挑戦の結

果の失敗のときには、特に。

 

 

空港へ急いでいる時の問題は「別ルートを通る」ことではなく、「別ルートのことをよく知らなかった」ことです。シ

ステム導入の問題は、一般的なシステムの形式ではなく、固有のシステム・ベンダー選定の問題です。

失敗の一般化を誤ってしまうと、その先にあり得る可能性をシャットダウンしてしまいます。

 

 

例えば、「これは大きな改善だ!」と思って取り組んだ仕事が、終わってみると期待していたより効果が見られ

なかった。新しい試みを盛り込んだ企画が会議で通らなかった。

 

そんなとき、「改善活動にはあまり効果がないから、そんなことに時間をかけても無駄だ」とか、「どうせ新しい試

みなど認められないんだから、今後は上司に受け入れられやすい企画を考えよう」などと考えるようになってしま

ったら、自分の成長は止まってしまいますし、会社の発展にもマイナスです。

 

 

「失敗をした。だから同じ行動はしない」ではなく、「失敗した。この失敗の根本的な原因は何か。そこから学べ

ること、変えられることは何か。では次はどんな風に行動(挑戦)するか」と考えられるか。

 

この差は大きい。

 

自分が行動するときに改めて心したいと思いましたし、マネジメントする立場としてはメンバーがそう発想できる

環境を提供していくことが大切だと、肝に命じました。

 

 

(2011年10月20日)

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