第110回 「日本」を買ってもらうのに日本文化のことを知りすぎている人は・・・

オーストラリアの大学院を修了したあと、現地で就職をしようと就職活動をしていたときのことです。

どうせなら日本企業の現地法人ではなく、現地の企業に就職しようと思っていたため、活動はかなりの
苦戦を強いられました。

そんなとき、ひとつの求人が目にとまりました。「日本」を感じさせる商品を扱うショップをオーストラリア
で展開している会社が、マーケティングのポジションを募集しているというのです。「これだ!」と思い、
書類を提出。ほどなくして、面接に来てほしいという連絡が入りました。

「これで仕事に就けるかもしれない!」かなり期待をして、会社に向かいました。

待っていたのはその会社の創業者の方でした。私の経歴に興味を持って、一度会ってみたいと思って
くださったとのこと。期待感は更に高まります。

しかし、話を進めるうちに、「今回のポジションはマーケティングなので、日本文化のことを知りすぎて
いる人はやはりダメ」と言われてしまいました。正直、一瞬耳を疑いました。え、「日本」を感じさせる商品
を売るのに、日本文化のことを知りすぎているとだめ???

ポイントはこういうことでした。あくまで商品を買うのは一般的なオーストラリア人である。彼らが「日本的」
と思う商品が必要なのであって、必ずしも日本人からみて日本的なものが必要なわけではない。だから、
普通のオーストラリア人の感覚を持っていることが重要なのだ、と。「日本ではそうしない」とか「それは
本当の日本のものではない」という意識・無意識の反応は逆に邪魔になる、と。

もし今後働いてもらいたいポジションが出てきたら連絡をするのでそのときは考えてほしいと言われた
ものの、がっくりと肩を落として帰りました。その後、幸い希望に近い仕事に就くことができて、その会社
との関係は切れてしまいましたが、今でも時々、あのときの面接を思い出すことがあります。


どこに視点を置くかによって、見える風景は変わるのだ、と。


前号の日経新聞の「編集長の視点」で、興味深いことが書かれていました。彼が、フィンランド人の学力
の高さ(OECDの学習到達調査で上位の常連)の秘密を探るために現地に取材に行ったときのこと。
フィンランドの学校の教師たちに、逆取材を受けたそうです。

その理由は、人口が1億人を超える国で唯一、日本が上位にいるからだったそうです。「教育水準を
引き上げるのは大国の方が難しい。なぜ高い学力が維持できるのか?」

日本人の学力低下について嘆く声ばかり目にしていましたので「あ、そういう見方もあるのか」と、頭を
後ろから叩かれた感じでした。以前にくらべて全体の学力が低下傾向にあることは事実なのだと思い
ますが、そのことでこれまでのことを全否定するのではなく、視点を変えることで、継承すべきことと改革
していくことの切り分けができてくるのではないかと考えさせられました。


自らの視点を変える大きなきっかけのひとつは、自分とまったく異なる立場の人の存在でしょう。テーマ
によっては、その違いが自分を批判しているとか、否定していると感じてしまうかもしれません。そこには
対立が生まれることもあるでしょう。

それを一歩引いてみて楽しめるくらいになれれば、新しいステージに進めると思うのですが、日々の生活
ではなかなか・・・。新しい年度、自分のテーマにしてみたいと思います


【今回参考にさせていただいた情報】
日経ビジネス 2012.4.2号 「編集長の視点」


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