第116回 すぐ隣にある、まだまだ知らない世界



昨年末、オーストラリアの内陸部を旅行しました。10万年前には湖の底で、4万年前の人類の骨が
発見されたという場所。そこには奇岩群が広がっていて、その写真を撮りにいくのが旅の目的でし
た。

ご存じだと思いますが、内陸部は乾燥地帯、場所によっては砂漠に近い状態になります。そこにた
どりつくには、舗装されていない道を車で延々と走らなくてはなりません。そんな旅で、2つの驚きに
出会いました。

最後の街を出てから、フリーウエイを2時間ほど走り(その間に見た車は数台のみ)、やっと目的地に
向かう道を右折しました。そこからが考えていた以上にでこぼこ道で、時速30キロ出せればいい方。
右折する場所には、「この先には給油所がありません」の看板もあり、いよいよ奥地に入っていくん
だ、という雰囲気です。

どうにか宿に着くと、そこは想像以上にさっぱりとしたおしゃれなコテージでした。前日泊った街の宿と
は比較にならないセンスの良さです。

レストランに行ってみると、食事はフランス料理をベースにした質の高いもの。夜の撮影に出かけるこ
とになっていたので、ビールを軽く一杯しか飲みませんでしたが、ビールの銘柄にはこだわりがあり、
ワインもなかなかいいものが揃っているようでした。

朝食も焼きたてのクロワッサンが出され、コーヒーも美味しい。

いったいどうして、どこからも遠い、英語でいうthe middle of nowhereに、こんな宿泊施設があるんだ
ろうと、頭に?マークが沢山浮かんできました。

どんなにいい宿泊施設でも、レストランでも、近くの街から2時間も3時間も泥道を走らなくてはたどり
着けないとしたら、リピートする客はそれほど多くないはず。。。

と、4,5人の客が入ってきました。朝の8時すぎです。周りに民家などないし、あのでこぼこ道を早朝
から走って、わざわざこのレストランまで朝食を食べにきたの??と、更に?マークが増えていきまし
た。

そこで、パートナーに、「あの人たち、早朝あんな道を走ってきたのかしら?」と質問すると、「まさか。
自家用セスナ機に乗ってきたんだよ。裏に滑走路があるんでしょう」と。

オーストラリアの内陸部は交通の便があまりに悪いので、知人たちとセスナ機をシェアして所有し、
普通に移動手段としているケースも多いのだそうです。また、休みの日には、フライトそのものを楽し
む人も少なくないとか。

日本で暮らしてきた私にとって、まったく想像もしない答えでした。そして、そういう人たちがいるので
あれば、こうした高級施設が成り立つこともやっと理解できました。


そしてもう一つ。

長い話になるので、全体の説明は割愛しますが、その宿からの帰り道、灌木しか生えていない草
原、360度地平線しか見えないという場所で、突然車が止まってしまいました。

こうした事態が起こりえることは予測して、一日分の水と食料は備えていましたが、宿を出てから3時
間近く一台の車も見ていない状況、外の温度が36度ということを考えると、正直足が震えました。

結論から言えば無事助かったわけですが、その時、身体能力の位置づけということを突きつけられま
した。

地図上で別の道がありそうなところを探しに行くと言ってでかけたのは、男性であるパートナー。ま
た、どうにかトラックに助けに来てもらったとき、力仕事で役に立てない私は、運転手さんに言われる
がまま、冷房の効いたトラックの運転席に座っていることしかできませんでした。

後でパートナーからは、私が冷静で精神的にタフだったから助かったとは言ってもらえましたが。

都会で暮らしているときは、女性だからということで特別視して欲しくないし、自分で何でもしたいと思
ってきました。しかし、こうした場面では意思の力だけではどうにもならず、何と無力なことか。こうした
環境での暮らしでは、ジェンダーに関する認識は違うだろうと思いました。

このふたつの経験は、ほんの近くに、まだまだ自分が思いつかないような世界、わかったつもりで全
然理解できていなかった世界があることを気づかせてくれました。

これに懲りず、仕事でも私生活でも新しい場所に出向いて、気がつかなかった世界に出会いたいと思
います。(あんな場所で車が壊れるのだけは二度と経験したくありませんが)

(2013年2月14日)
破壊と創造の人事

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