第82回 「私の知っている『あの人』」に似ている

自分は誰に似ているか。

自分の写真を送ると似ている芸能人を教えてくれるサイトなどもあるようですが・・・
私にもよく「似ている」と言われる人がいます。それは、

「私の知っている『あの人』」。

その人たちの周囲にいる人のうちの誰かに似ている、と昔からよく言われるのです。

面白いことに、Aさんが私と似ていると思っている人と、Bさんが似ていると感じる人を並べてみるとまったく
似ていません。私の顔に目立った特徴がないというのが最大の理由なのでしょうが、人によって自分の見え方が
こうも違うのかといつも驚かされます。

ある時、「私の知っている『あの人』に似ている」といってくれた人と私の関係が、その選択に大きく影響している
ことに気がつきました。その人が気なる私の「部分」に注目して、判断しているのです。

そのことから、組織やグループの中では、誰がみても普遍的な「私」という確固たる存在があるわけではないの
ではないか。人と私の間にある「関係」にこそ、大きな意味があるのではないか、と考えるようになりました。

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オーストラリアで働いていたとき、当初日本人が私一人だった組織に、二人の日本人の方を採用したことがあり
ます。様々な文化的背景の人が集まったグループの中にたった三人の日本人、ということですぐに良好な関係が
できました。三人で他の人たちの文化的背景の違いを上げて、納得し合ったりもしていました。

しかし、ある仕事のやり方でぶつかったことをきっかけに、そのうちの一人(Cさんとします)が私のことをあからさ
まに敬遠するようになってしまったのです。

そこから、組織の中の関係ががらりと変わります。それまで親しかった日本人メンバーだけでなく、それ以外の
メンバーも、Cさんの態度をみて私に距離を置くようになってしまいました。
私自身が何か変わったわけでないのに、働く環境が一転しまった事実に茫然としたのを覚えています。

しばらくしてCさんは退職。代わりに、別の日本人の方(Dさんとします)が入社してきました。
彼女が入ってきてほどなくして、組織の関係は昔のようなものに戻り、正直、働き易い職場が戻ってきたことに胸を
なでおろしたのを覚えています。

当時の私は人間としても仕事をする者としても今よりもっと未熟だったので、その状況はCさんが原因だったのだと
断じていました。結局私は悪くなかったのだ、と。Dさんが入ってきたら、問題が一気に解消してしまったのですから。

しかし、今、様々な経験を積んでみて思うことは、Cさんか私のどちらかが悪い、という二者択一の問題ではなく、
間にあった「関係」に問題があったのだ、ということです。

つまり、Cさん一人、私一人を責めるということではなく、まずは間にあった「関係」に注目することで、Cさんも私も
それぞれの力を発揮できる状態に戻れたのではないか。おそらく、Cさんが見ていた私は私の一部であっただろう
し、私が理解していると思っていたCさんは、本来のCさんのほんの一部だったのだろうと思うからです。

問題だったのは、それをもって全人格だと判断し、相手を否定的に理解する「関係」を築いてしまったということだったのだろうと。

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今、「多様性」という言葉が注目を集めています。
人事の世界では、組織の中にいる人材について使われることがほとんどでしょう。性別、国籍、働き方等々。

しかし、「私に似ている『あの人』」のことや、Cさんと私の間で起きたことを考えると、一人の人の中にある
「多様性」に注目することも重要なのではないかと思います。

その多様な要素が、相手によって、状況によって、様々な「関係」を結んでいると捉えてみると、今活躍できて
いない人材、上手くいっていない組織の見方や、それに対する対応のし方が変わってくるように思うのです。
そして、そうした捉え方は、今使われているところの「多様性」の定着にも貢献していくのではないか。

巷で市民権を得ている、「『2・6・2』の法則」をベースとした発想からは大きく外れますが、今後の人材マネジメント
のヒントになるのではないかと、最近感じているところです。

自分の中でもまとまり切れていないのですが、皆さんのご意見をいただけると嬉しく思います。

(2010年12月9日)

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