第85回 背中合わせにあるまったく知らない世界

最近、家の近所のジムに通い始めました。
あまりの肩こりのためマッサージ店に駆け込んだ時、こんなことをしていてはいけないと思い、一念発起。

今の家に越してきてから3年近くが経ちますが、ジムに向かう道は一度も歩いたことがありませんでした。
ほんの数十メートル先にある道です。そこには、小さなスーパーマーケットや公園、レストランなどがありました。
驚くと同時に、ずいぶん損をしていたな、と思いました。

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このメールマガジンの編集を手伝ってくれている女性は、インターナショナルスクールで小学生から高校生
までを教えています。日本語の先生です。

先日、クラス全体で読む課題図書を選定したと言います。読む前から本に興味を持ってもらいたいと、
彼女は、生徒たちに「お父さんお母さんが、今子供に読ませたい本を3冊推薦してもらってきて」と頼みました。
それらを集めて、そのなかから生徒たち自身が、自分たちが読む本を選ぶ、という方法をとったのです。

彼女は、各家庭から推薦されてきた本を見て、ちょっと驚いたといいます。
親が選んだ本は、いつも子供たちから受けている印象と見事に一致していたからです。
「読ませたい本」ですから、その本を今まで子供に読ませていたというわけではありません。
子供たちも、「親はこんな本を読んで欲しいんだ−」と興味深々といった状況にもかかわらずに、です。

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最近、20年くらい前に経験したことと非常に似たシチュエーションに直面しました。
実はそのことには、実際に対処し終わってから気がつきました。
そして、20年前とはまったく異なる対応をした自分にかなり驚きました。

おそらく、20年前の私が今の私の対応を見たら、きっと不満を持ち、手厳しく批判をしたことでしょう。
何と保守的で、つまらない解決方法を取るのだ、と。
今の私は、何が怖くて逃げたわけではなく、かえって発展的に問題を解決するために判断したわけですが、
おそらく20年前の私には、その意図はまったく理解できなかったでしょう。
そして、おそらく、今の私は20年前の私が持っていた情熱やいい意味での無謀さをそのままは思

出せないはずです。

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人は、経験したことがないこと、周りに存在しないもの、自分が身を置いていない状況などを、基本的には
理解できないのだと、改めて気がつかされました。

私たちは、自分の周りにある世界が当たり前だと認識しがちです。
少し年や経験を重ねてモノがわかってきたと思ったり、インターネットなどを通じて必要な情報の大半が
手に入ると信じたりしていればいるほど、そうなってしまうと思います。だから、まったく知らない多くの世界
が自分のすぐ横に、背中あわせにあるのだということになかなか気がつけない。

だからこそ、物理的にだけでなく、知的にも、ときどき遠回りをしたり、立ち止まったりする価値があるの
ではないでしょうか。ビジネス書を少し横に置いて、「実用的ではない」「難しそう」と敬遠してきたジャンルの
本を紐解いたり、世代や文化の異なる人たちと積極的に話したりすることで、少なくとも「知らない」という
事実に気がつくことができる。

そうした世界の拡がりを持つことが、グローバル化するビジネスや価値観が多様化する労働環境で成功し
ていくための近道なのではないかと、最近感じているのですが・・・皆さんはどうお考えになるでしょうか。

(2011年2月17日)

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