第95回 覚悟とぶれない軸を持って、実践できているか

先日、秋田にある国際教養大学を訪れました。話題の大学ですのでご存じの方も多いかと思いますが、
創立8年目を迎えた公立大学です。同大学は「国際的に活躍できる人材の育成」を目指しており、その
実現のために、学生たちには徹底した学びを要求します。

例えば・・・
・授業はすべて英語
・TOEFL500点以上を取ることが、授業を受ける条件
・新入生は、外国人留学生とともに一年間の寮生活
・在学中に一年間の海外留学(1年分の単位取得)が必須
・4年で卒業できる学生は5割程度(!)(厳格な卒業要件)
・一定期間以上基準以下の成績を取り続けると退学勧告あり

学長である中嶋嶺雄氏の著書『なぜ、国際教養大学では人材が育つのか』を読んで以来、一度訪れて
みたいと思っていたのですが、幸いにも仕事で訪問する機会を得ました。

書評はこちらから

そこでは、365日24時間開いている図書館、語学研究センター、実際の授業を見学させていただき
ました。

本で知識を得てはいましたが、自分の目でみて、その徹底ぶりに改めて驚きました。

図書館は、365日24時間開放さているというだけでも通常の大学では考えられないと思います。
しかしそれだけではなく、長時間の学習に耐えられるように高さの異なる数種類の椅子が用意されていたり、
雪が降っても他の施設から自由に行き来できるように他の建物と2階部分が渡り廊下でつながれ
ていたりと、学生たちが勉強できる環境整備に余念がないのがわかります。

語学研修センター(「言語異文化学習センター」)も、35カ国語の学習教材が用意されていました。
教材の種類も、DVD、CD、書籍、CNN、BBC、73チャネルの衛星放送、各国語検定試験用教材と
多種多様。訪問した時には、多くの学生が「スピーキン/リスニングルーム」で、思い思いに学習を
進めていました。

そして、授業。教授は日本人でしたが、授業中に一切日本語はなし。
その日は学生さんのプレゼンテーションで、当然、資料から話す内容まですべて英語。小さな階段教室
の席は満席になっていました。




同大学の教授の選考は非常に厳しく、1年毎に授業の質が評価され、3年毎に契約更新が行われます。
そこで基準を達しなければ契約更新なし。
開いたポストに対しては、世界中から公募をします。「本当に契約更新にならない教授はいるのですか?」
と伺ってみましたが、実際にかなりの数の教授が入れ替わることもあるそうです。

学生に「徹底的に学びなさい」と言う大学側が、学べる環境を徹底的に整備しているのだ、とその覚悟
と軸のぶれない信念に感銘を受けました。

普通なら、半数の学生が4年で卒業できないとなると就職に不利だからゲタをはかせようと考えてしま
うでしょう。県の反対を押し切ってまで、閉館のない図書館を作らないでしょう。教授の質を保つため
に徹底した評価制度を作って「同僚」を辞めさせるというストレスを回避しようを思ってしまうでしょ
う。

覚悟と軸をぶらさない信念を感じました。

その覚悟と信念が、学生に確実に伝わり、それに応えた学生の努力が、就職率100%という数字に
つながっているだと思います。キャリアセンターにもお邪魔しましたが、今年度、大学まで出張説明会
に来た企業名が貼り出されていました。100社ほどありましたが、名だたる大企業・有名企業ばかり
でした。大学内で面接をして内定を出す企業もあるそうです。

今の学生の質の低下を嘆く声を聞きます。しかしそれは、大学だけではなく、企業も含め「大人」側の
問題が大きいだろうと痛感しました。

そもそも我々大人が、覚悟とぶれない軸を持っているのか。それに基づいた実践をできているのか。グ
ルーバル化に向かう日本で働く者として、改めて考えさせられました。




「覚悟」「信念(信じきる力)」を考えるとき、映画「インディージョーンズ」の何作目かの中で、主人公
が崖っぷちに立たされている場面を思い出します。
その先には橋(道)があるはずのですが、彼の目には見えない。ただ、深い谷底が見えるだけです。
しかし、そこには橋があると信じて一歩を踏み出すことによって、橋(道)が見えてくるといったもの
だったと思います。

覚悟と信じる力が、生み出す未来。今回の秋田訪問で、そんなことを感じました。



参考にさせていただいた書籍

『なぜ、国際教養大学で人材が育つのか』中嶋嶺雄・著 祥伝社黄金文庫


(2011年7月28日)  
破壊と創造の人事

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