第98回  シッダールタ・伊達公子・一番星

「さぐりを求めると・・・その人の目がさぐり求めるものだけを見る、ということになりやすい。また、その人は
常にさぐり求めたものだけを考え、一つの目標を持ち、目標に取りつかれているので、何ものをも見いだす
ことができず、何ものをも心の中に受け入れることができない、ということになりやすい。
さぐり求めるとは、目標を持つことである。これに反し、見いだすとは、自由であること、心を開いていること、
目標を持たぬことである。」

ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』から。
『シッダールタ』は求道者が悟りの境地に至るまでの苦行や経験を描いていた小説です。
上記は、主人公であるシッダールタが、年老いてなお修行僧として真理を追究しつづけている幼馴染のゴ
ーヴィンダの問いに対して答えたもの。

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「彼女(ヴィーナス・ウイリアムズ)はトスアップして一回落としていましたけど、それはトスが乱れたから
ではなく、その間に私の動きを見ていたんです。どっちに反応しているのか、って。確実にそういう目を
していました。トップ選手でもそんなことをする選手はあまりいない。だからほとんどの選手は、ヴィー
ナスに同じことをやられたら、ただ単にトスが上がらないだけと考えるはずです。」

これは、テニスのウィンブルドン大会でヴィーナス・ウイリアムズと3時間の激闘を終えたくクルム伊達
公子選手の言葉。
女子でも時速200キロ近いサーブを打ち込むことが普通になってきた今、勘と力だけではそのスピードボ
ールは打ち返せないといいます。特に身体的なピークを過ぎた選手が正面からぶつかっても、打ち返すこ
とは不可能に近い。

そこで、伊達選手は相手がサーブを構えた時点で、相手の身体の向き、構え、バランス、そして目や顔つ
きまで判断し、どこに打とうとしているのか読み取っているのだそうです。「でも、残念ながら、若さや勢い
があるとそういう部分には気がつかないものなんです」(伊達選手)

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ある日の夕暮、ぼんやりと暮れていく空を見つめていると、視界の左の方に突然光が瞬きました。いわゆ
る「一番星」でした。とっさに「あ、星が現れた」と思いましたが、はっと気がつきました。星は私が気づく
前からずっとそこにあって、単に私の目の能力が星の光を感じられる状態(夕暮れ)になっただけ
なのだ、と。

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最近、気になった言葉やエピソードを集めてみました。

一般的に、ひとつの世界での経験が長くなればなるほど、安定走行的な行動をしがちになります。しかも
「自分はよくわかっている」と思ってしまう。自信を持てるだけの経験を積むことの重要性をひしひしと感じ
つつ、その分意識の「視野狭窄」が起きているのではないかと背筋がヒヤっとする今日この頃です。
しかも、見えてないことは、見えていないがゆえに気づくのが難しいのですから・・・。
皆さんの「視野」には何が映っているでしょうか。

今回参考にさせていただいた書籍・情報

『シッダールタ』ヘルマン・ヘッセ著 新潮文庫
あらたにす「キミコの魅力」吉井妙子
破壊と創造の人事

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