戦略人事とデータ活用

人事はどのようなデータを集め、扱っていくことが求められているのか?

では、人事部門は、戦略的に動いていくために、どのようなデータや事実を集め、活用していけばよいのでしょうか?

ここで、人事とデータという問題について、2つの示唆に富む意見を紹介したいと思います。

ひとつ目です。

「データを分析しても、既に起こったことを事実としてレポートしているだけならば、企業の競争力を強化するために役には立たない。」

これは、2008年に日本語に翻訳された、『分析力を武器とする企業』(日経BP社)の共著の一人である、トーマス・H・ダベンポート氏が、2007年米国シカゴで開催された HR Technologyという人事とITをテーマにしたコンファレンスのオープニングの講演で話された言葉です。

ダベンポート氏は、データの分析といっても、以下の2つがあると指摘しています。

(1)「既に起こったこと(事実)」をレポートするもの。つまり後ろを振り向いて過去のことを語っているレポートを出すもの。

(2)「なぜ起こったか」について分析し、「起こらないために」「起こり続けるために」何をすればいいのかを決めることをサポートするもの。決断の最適化、将来の予測を助ける指標を提供するもの。

そして、(2)こそが重要なデータ活用の考え方で、経営やマネジメントが決断をするために役立つデータを提供し、それによって企業の競争力が強化されるということを考えるのが、これからの人事に求められている、と提言しています。

2つ目は、

「問題は、人事関連データが不足していることではなく、人事が集めているデータと経営・マネジメント層が求めているものがかい離している(つながりが見えてない)ことが、大きな問題なのだ」 というものです。

これは、同じく2007年のHR Technologyのクロージング講演で、"Beyond HR New Science of Human Capital"(日本語翻訳なし)の共著の一人である、ジョン・W・ボーデュリー教授が提起した問題です。

人事部門は、データ活用ができていないと言われているが、それは量の問題ではなく、経営・マネジメントが求めていることに応えられていない質の問題なのだ、と指摘しています。

多分人事部門はいろいろなデータは持っている。しかし、それが経営の視点で考えたら、的外れなものである可能性が高い、ということです。

それはあたかも、大事なものは暗闇の中にあるらしいと気がついているのに、ただ見易いという理由から、光の当たっている部分だけを探っていないか、という比喩を使っていました。

「大切なものは、暗闇のなかにあるかもしれないじゃないか」という視点を持ちなさい、と。その暗闇に光を当てる努力をするべきではないかと。

この2つの指摘は、国の違いといったものを超えて、人事部が莫大な投資をしている人材に関して、事実をベースとしたマネジメントを目指し、それをもって、企業の売上に貢献していくために、示唆に富んでいます。

経営の決断の最適化、将来の予測を助ける指標を提供し、経営・マネジメントがビジネスを成功させるために必要なデータや活動を提供する。これがこれからの人事に求められてくるものとなってきます。

是非、これらの視点から、自社の人材データの管理・活用を考えてみてください。

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