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第162回 「要員計画・人件費シミュレーション」という土台は後回しにされていないか?

 今回の「おすすめの書籍」で取り上げた『逆・タイムマシン経営』でも書かれていますが、IT業界では「飛び道具」(別の言い方では、バズワードともいえる)が後から後から現れてきて「それさえ導入すれば、夢のように問題が解決する」との言説が溢れ、少なくない企業がそれに飛びついていく、という現象が繰り返されています。そうしたことに関する過去の記事を、日付と「飛び道具」の名前を隠して読んでみると、今の状況かと思うくらい構造が酷似しているということが指摘されています。


 また、最近上梓された『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』では、日本企業の人事の世界では、60年にわたって「脱日本型雇用」論争が、名前・形を変えて続いていて、その構造はほとんど変わっていないことが指摘されています(現在の「ジョブ型」もその一つ)。本書の「はじめに」で、政府や団体の発表、学術論文などが具体的に紹介されています。その後、それらが発表された年代(想像以上に「昔」でした!)が明かされますが、言われなければ最近の言説だと思ってしまうくらい、内容や問題の構造が変わっていなくて、驚かされます。


この二冊は、手にとっていただく価値があると思いますので、是非。


 私自身は、「IT業界の中の人事エリア」という分野で17年以上仕事をしています。つまり、上記の掛け合わせの中に長い間身を置いてきたわけですが、二冊の本の指摘に、何度うなずいたかしれません。実際に「トレンド」の波が、数年おきに盛り上がっては静かに消えていく状況を、何度となく経験しているからです。
「あれ、これって、名前は変わっているけれど、以前うまくいっていなかったことと本質的な構造は変わっていないよね?」とか、「新しい分野でトレンドが出てきても、昔からあった課題はそのまま残っているよね」と、何度心でつぶやいたことか。。。

「昔からあった課題はそのままではないか?」というもののひとつは、人件費管理(シミュレーションと予実管理)と、中期経営計画と連動した要員シミレーション・人件費シミュレーションといった分野です。実際に担当されている方にお話を伺うと、かなり大規模の企業でも、Excelを駆使して手作業に頼って行っているというケースが少なくありません。


 そんななか、「人的資本経営」「エンゲージメントのKPI化」「離職予測」・・・などなど、気になる言葉、魅力的な解決策が溢れていて、「是非、取り組みたい!」という気持ちになることはよく理解できます。何か新たなことに挑戦することは、自分にも周囲にも、プラスの影響を生み出す可能性も高い。

 しかし、だからといって長年の課題を後回しにしていいということにはなりません。特に、ビジネスの先行きが見通しにくい(=想定以外の方向に
舵を切る必要が出る可能性が高い)今、コストにも投資にもなりうる人件費の的確な把握とマネジメントは、何をするにも重要な土台です。
そうしたことを、属人的に、手作業ベースで行っていることで生まれているダメージ、逸失利益は想像以上に大きく、じわじわとその影響がでてくることでしょう。

その点について、皆さんの会社では堅固な土台が築けているのか、今一度、是非、検証してみていただきたいと思います。


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 自分たちに関していえば、そういう問題意識から、仮想の企業を設定し、人材関連だけでなく経営数字までを具体的に作成し、中期経営計画を実現していくために、人事部長がどのような思考で人事施策案を考え得るのか、弊社のコンサルタントがリアルなシミュレーションシナリオを作成しました。


 私たちはシステム会社なので、そこで使えるシステムという視点が入ってくるわけですが、それを共有して問題提起しよう、ということになりました。少しでも要員管理・シミュレーション、人件費シミュレーションに興味のある方は、是非ご参加ください。


■中長期の要員・人件費計画はこう実現する
 「現場からの要求」vs「経営からの人件費率の抑制」
6月30日(水)11:00~11:30/7月19日(月)(同内容)
詳細・お申込はこちらから 


『逆・タイムマシン経営』(書評)はこちらから


『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』
書籍の詳細はこちらから


エッセイ バックナンバーはこちらから
http://www.jinzai-soshiki.com/essay/index.html
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