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改めて、古くて新しい課題について考える
事業会社における人に関わる費用=広義の人件費マネジメント

■ 執筆者
インフォテクノスコンサルティング株式会社
取締役 兼 プロダクト事業統括 斉藤 由美氏/セールス・マーケティング事業部長 大島 由起子氏

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「広義の人件費」の適正ラインを知るためには、成果との紐づけが必須である

 ここまでは、人の働きに対して直接支払われる費用の話を中心にしてきましたが、人件費を「利益を生み出す源泉」と捉えるとすれば、人材を採用し、育成する費用もまた、「人に関わる費用=広義の人件費」として把握することを検討すべきでしょう。

 そして、すべてを総合的に把握したうえで、それはコストとして適切か、投資として期待を超えた価値を生み出しているかを検証していく必要があります。それが、自社の短期はもちろん、長期の事業戦略に対して、適正な人件費のラインを知る道=利益を出せる構造を作る、ことになるからです。

 その大前提は、「成果」との紐づけができることです。企業が責任を負う最終的な成果は、「単年で利益を上げること」と、「事業を継続しつづけること」と言えるでしょう。(従業員(仕事に関わる人)の精神的・肉体的健康や、成長・成功は、その実現のためのもっとも重要な要素のひとつという位置づけであり、同時に、利益を上げ、事業が継続していくことが、従業員の成功の大前提)

 事業に関わる数値や情報と、人に関わる費用を結び付けて考えることができる土台がなければ、自社にとって適切なコスト、適切な投資の判断はできないはずです。「広義の人件費」の使い道と量を決めていくのに、「世の中で良いと言われていること」「学術的にも証明されていること」を参考にすることも有効な面はありますが、最後は自社の「成果」に繋がっていることが重要であることは言うまでもありません。残念ながら、そのつながりを曖昧なままにしている企業が多いという印象です。皆さんの会社ではいかがでしょうか?

Q:コストとしての「人に関わる費用」の適正性、投資効果の妥当性を
  考えるために、自社の「成果」と「人に関わる費用」を紐づける
  ことができる 「土台」をもっていますか?
Q:固定費として支払っている「人件費」が、正しく価値を生み出す
  方向で使われているか検証できますか?

 ビジネスに身を置く人にとっては、わかりきっている、至極当たり前の話をしてきました。しかし、頭でわかっていることと、実際の行動に差異はないだろうか、という問題提起のために、皆さんへの質問を挿入しています。過去の成功体験が活かしにくいどころか、逆にそのことが成功を妨げることもある時代です。速度感をもってビジネスに取り組むことが求められるなか、変化に対応しながらも利益を出せる仕組みを構築していることはますます重要になってきます。そのなかで、コストでもあり重要な投資でもある「広義の人件費」の適切なマネジメントは、非常に重要になっていきます。これを機会に、少し立ち止まって考えていただけると幸いです。

以上

2022年 1月 27日

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■ PROFILE
インフォテクノスコンサルティング株式会社
取締役 兼 プロダクト事業統括  斉藤 由美氏

人事業務担当者として人事業務改革、人事情報システムの運用を担当。その後ITコンサルタント、人事コンサルタントを経て、2000年にITCを設立。人事にとどまらず、経営者が必要とするシステムを提案・構築できるコンサルタントとして活躍。Rosic人材マネジメントシステムの基本構想から設計に関わり、経営に貢献できる人材マネジメントシステムの発展に力を入れ、活動を続けている。


■ PROFILE
インフォテクノスコンサルティング株式会社
セールス・マーケティング事業部長  大島 由起子氏

株式会社リクルート、Hewlett-Packard Australia LtdのAsia Pacific Contract Centreを経て、2004年より現職。企業の人材マネジメントにおけるIT活用推進の支援を行う。
著書:『破壊と創造の人事』(楠田祐・共著) ディスカヴァー・トゥエンティワン