特別対談

第4回 明日の試合のために時間を使いますか。昨日の試合を正確に反省することに時間を使いますか?(後半)

第4回 明日の試合のために時間を使いますか。昨日の試合を正確に反省することに時間を使いますか?(後半)

島村 隆志氏
株式会社ナイキジャパン 人事本部長

【ナビゲーター】
楠田祐(戦略的人材マネジメント研究所 代表)


島村 隆志(しまむら たかし)氏 プロフィール

島村 修三 1987年大学卒業後、JFE商事株式会社入社。鋼管部にて5年間鉄鋼の営業を担当後、人事部へ異動。採用・研修に3年間従事した後、労政・海外人事・給与厚生・総人件費担当。
1996年株式会社ジュピターテレコムへ入社し、経営企画室人事課長として会社の立ち上げを組織人事面からサポート。
1999年株式会社ユー・エス・ジェイ(ユニバーサルスタジオジャパン)へ入社し、人材開発課長として主に採用・人材開発・外国人マネジメント面からテーマパークの立ち上げをサポート。
2002年より人事部長。
2006年株式会社ナイキジャパンへ入社し、人事本部長。
2009年よりナイキ本社、タレントアクイジション(人材スカウト)部門アジア太平洋地区統括本部長を兼務、現在に至る。


新しい価値を常に世の中に提供し続けているNIKE。その日本本社で、HRのトップを務める島村氏。現在は人事本部のトップであるだけではなく、米国本社組織において、アジア地域のタレントアクイジション(人材スカウト)部門の統括本部長も兼任しています。NIKE Japanにおける組織開発や人材開発から、グローバル人材に必要な考え方まで、豊富な経験に基づいた具体的なお話を伺いました。

前回の対談内容はこちらから↓
明日の試合のために時間を使いますか。昨日の試合を正確に反省することに時間を使いますか?(前半)

グローバル人材とは、多様な環境で確実にパフォーマンスを出せる人

【楠田】
島村さんが考えるグローバル人材とは?

【島村】
グローバル人材というのは、結局のところ、Diverse(多様)な環境で確実にパフォーマンスを出せる人、ということだと考えています。

もちろん、基本的な英語力は大事なのですが、そもそも日本人はコミュニケーションのスタイルが異なるということに自覚的であることがもっと重要だと思います。日本人は同質性の高いコミュニティの中で、暗黙の前提でコミュニケーションすることに慣れてしまっています。その感覚でいると、バックグラウンドの異なる人と話しても肝心なことが全く通じないということが起きます。ですから、先ほど申し上げたように、「何でここまで説明しなければならないの?」というくらいまできっちりと説明していく癖をつけるといいと思いますね。そして、臆することなく自分なりの視点で意見を言っていく。そうすれば、Diverseな環境でも受け入れられていくと思います。

また、気になるのは、グローバル人材といったとき、今だに「アメリカ化」「西欧化」だと勘違いしている人が多いということです。もう少し具体的に言うと、欧米的なロジカル思考を持っている人がグローバルに通用する人で、その他は通用しない、逆にそれさえあればグローバルに通用すると思い込んでいる人が少なくない、ということです。それは、実は20年前の姿だと思っています。

今、人材の強みを見る際に、Strategy(戦略立案)に強いか、Engagement(チームの人たちや周囲の巻き込み)に強いかという見方をすることが多いのですが、従来の欧米的なロジックだけで考えると、Strategyに強い人がグローバル人材の要件として適性があると考えがちです。逆に、Engagementを重視するのは、達成志向・結果志向のプロ意識に反していてグローバル化にとってはマイナスではないか、と。

しかし、実際にグローバルで活躍している人、つまりDiverseな環境でパフォーマンスを出している人を見ると、両方のバランスが取れているんですね。逆に、Diverseなチームの中で脱落していくのは、実は、Strategy「だけ」の人なんです。

怖いなと思うのは、外資系企業に長くいることで、グローバル化を理解していると考えている人も少なくないということです。西欧的なロジックで仕事をしていることをアイデンティティにして表層的な個人主義を崇拝し、チームに対する貢献や巻き込みを軽視するといった態度を取っている人もまだまだ見受けられます。そうした人たちは、次々に欧米系企業に転職していくので、ますますその発想から抜け出せなくなる。個人的には「外資系メリーゴーラウンド」と呼んでいるのですが・・・。そういった発想は、かえってこれからのグローバル化を阻害することになっていくと思いますね。

「ベンチの厚さ」が、変化する環境に強い組織を作る

【楠田】
さて、次に、Succession Planning(後継者育成)について伺いたいと思います。今、日本企業では次世代リーダー育成に悩んでいるところが多いように感じています。そのあたり、どのように考えられているのか教えていただけますか?

【島村】
Succession Planningの話で必ず出てくるのが、「ベンチの厚さ」を形成するということです。チームスポーツの世界で、試合に出ていない選手層が厚いチームが強い、と言われることと同様です。野球なら9人、サッカーなら11人のレギュラーメンバー以外に、どれだけの選手を揃えることができるのか。その厚みがあるチームは、様々な状況や変化へ対応することができるため、強いチームとなっていく。その考え方を組織に当てはめています。

具体的に言えば、ひとつのポジションに対して、後継者候補を2名作っていくことを目指しています。そして、その後継者候補一人一人に対して、その後継者候補を2名作っていく・・・と考えていきます。2名というのには意味があって、一人はStrategyに強い、もう一人はEngagementが高いといったように、異なるタイプを育てていくことで、変化に対する柔軟性を担保していく。これも「厚さ」形成の戦略のひとつです。

たとえば役員が15名いるとします。今、そのレベルに行ける人、次世代リーダー候補を30名作る、その下にまたHigh Potential(ポテンシャル人材) な人のグループを60名作るというぐあいに・・・。そして、役員の15名と次世代リーダー候補の30名は、グローバルタレントとして、常に誰かが「Export」されている状態を作るといったメカニズムを作るということです。

人の育成は、70・20・10の割合で

【楠田】
後継者を作っていく、ということですが、そこでの教育・研修についてはどのような考え方を持っていらっしゃるのですか?

【島村】
人が学習・成長をするときのリソースは、70・20・10と言われていて、我々もそれに沿って育成を考えています。

【楠田】
70・20・10とは?

【島村】
これは、研修や書籍から学べることは10、コーチングや他人の行動から学べるのは20、残りの70は自らの経験から学ぶ、という考え方です。ただ、実は、これは日本人にとって新しくも珍しいものでもなくて、内容的にはそれぞれ、研修、OJT、ローテーションに当てはまるんですよ。ただ、それを、70・20・10とわかりやすく説明して、受けている本人が今何をしているのかを明確に意識できるようにした、という点が異なるということです。また、これに明確なOperating Mechanism(運用の仕組み)を組み込むことが成否を分けるポイントでしょう。

【楠田】
具体的にOperating Mechanismとは?

【島村】
例えば、「20」のコーチングについて言えば、上司は1週間に一回、もしくは二週間に一回、必ず一対一のミーティングを部下と行うことがどの部署でも行われているような仕組みやリズムが組織に埋め込まれているような状態のことです。それも、単に業務進捗報告を受けるという漠然としたものではなく、「今、何がキツイのか」「どうやったら成功をサポートできるのか」「どのボタンを押したらやりやすくなるのか」など、次の行動につながる具体的な話し合いをすることが必要です。このような各論での行動の基準を持っているかどうかが、大きな差になってくると思います。

これを、「OJTで育成していく」といった漠然とした話で終わらせてしまうと、新卒の期間だけの話と解釈されたり、人によっては「彼女はもう一人前だから、あとは一人で頑張らせれば大丈夫」といった何となくの解釈をしてしまって、実質機能が止まってしまう危険性があると思います。

こうして上司と部下の間で、具体的な話を定期的に一対一で必ず実施するということが全社的に行われるようになると、それが組織のカルチャーになっていきます。そうなると、決められた期間以外でも、必要に応じてそうしたコミュニケーションが取られるようになり、組織運営の面でも持続的な強さが出てくると思います。

【楠田】
確かに、昔の日本企業ではそうしたことが自然に行われていたように思いますね。

【島村】
そうですね。OJTと言ったらフォーマルな感じで腹を割って話がしにくい。だからといって、飲み会だとカジュアルすぎて真剣な話がしづらい。だから、喫煙ルームでこそ、本当の話が聞ける、なんて言われていましたよね。そんななかで、ちゃんとした上司はうまく部下の本音を聞き出していたんでしょうけれど、今の若い人はお酒もあまり飲まないし、煙草も吸わない。いろいろなことで接触機会が減っていくなかで、人工的にその世界を作っていかなくてはならないというのが現状で、それが今我々がやっていることだと思っています。

【楠田】
島村さんご自身も上司と定期的な個別ミーティングをしているんですか?

【島村】
はい。私には2人の上司がいますが、日本の上司とは通常の業務に関するミーティング以外に、週一回必ず一対一で、そして、米国本社にいる上司とは、週に一回電話でミーティングをしています。このコーチングカルチャーが定着していくと、実は、パフォーマンス評価に時間がかからないというメリットもあります。通常の査定というのは、中間評価とか期末評価というのがあって、そのたびに社内が大騒ぎするようなところがありますよね。一旦つけられた評価を、部門調整にかけ、本部長調整、役員調整を通して、社長決裁まで上げていくと、2、3カ月くらいかかったりもする。それに対して、NIKE Japanの場合は、すべてが2週間くらいで終わってしまいます。

「明日の試合のために時間を使いますか。昨日の試合を正確に反省することに時間を使いますか?」

【楠田】
パフォーマンス評価にあまり重きを置いていない?

【島村】
そんなことはありません。しかし、毎週毎週、上司と部下は具体的な仕事や課題の話、個人の成長に関することまで話をしているわけですから、査定だからといって、いきなり半期の業績の棚卸をする必要はないんです。もちろん、配下の組織の評価点のバランスは確認しますが、実際にほとんど大きなぶれは見られません。

パフォーマンスを正しく評価することは大事だと思いますが、たとえば「売り上げが上位目標に5万円足りないから評点は○○だ」といった具合に、近視眼的な正確さに多大な時間と工数をかけすぎるのはナンセンスだとは思っています。なぜならば、パフォーマンスはあくまでも過去のことだからです。未来のことを語るベースとなるのは、一人ひとりのポテンシャルです。そちらに時間を使う方が建設的だと思いませんか?つまり、「明日の試合のために時間を使いますか。昨日の試合を正確に反省することに時間を使いますか」ということです。

ですから、私がTalent Managementの分野で使っている時間を考えると、8:2でポテンシャルに関する仕事ですね。Talent Managementをちゃんとやっていこうと思ったら、こうした発想が必要だと思います。

【楠田】
Succession Planでの具体的な育成例を伺えますか?

【島村】
実はNIKEでは、生え抜きの社員がトップマネジメントに上がっていくというケースが少なくありません。現在のCEOであるマーク・パーカーは、もともとフットウェアのデザイナーでした。決して最初から経営のプロとして採用されたわけではありません。また、現在のリテール部門のヘッドは、スポーツインストラクターからスタートしています。彼らは、ある時期にポテンシャル人材として認められ、Succession Planに乗って、今の地位まで上がっていっています。

彼らのように一旦ポテンシャルを認められた人材に対しては、一人一人に対して長期的なプランを作成するんです。これは、例えば、「5年後にこの人はどこにいてどんな貢献をしていてもらわなければいけないの?」という問いから発して、達成目標を決め、それを達成するために必要な経験を具体的なポジションレベルに落とし込んでいくものです。それが、先ほどの話でいくと、70の「経験」の部分。それに合わせて、20の「コーチング」、10の「研修・学習」のプランを立てていきます。

【楠田】
これはまったく一人一人に対して個別の作業なんですか?パターンなどはない?

【島村】
まったく、個別です。マネジメントグループとHRで決めていきます。

【楠田】
マネジメントグループとHRが、テーラーメイドで決めていく、と。

【島村】
はい、まさにテーラーメイドで。先ほど、「ベンチの厚さ」のお話をしたときに、たとえとして、役員レベルに上がる可能性のある次世代リーダー候補を30人作るという話をしましたね。このたとえでは、30通りのテーラーメイドのキャリアプランを作っていくということになります。これはまさに、ポテンシャルをどんどん引き出して更に上げていく作業。8割の時間が必要だという理由をご理解いただけると思います。

【楠田】
それがNIKEの強さの根源なんですね。しかし、例えば5年というのは、今のビジネスのスピード感からいくとずいぶん先のこと、という感じがあります。おそらく誰も5年先のことなど確約できないのではないかと思いますが・・・。

【島村】
おっしゃる通りだと思います。これは会社として5年先を約束する、ということではありません。5年後に、会社が期待する成長と、本人が目指したいことをすり合わせて、明文化し、実行に移していくということです。実際に、毎年毎年見直します。一回決めたら固定されるものではないのです。

【楠田】
毎年見直しが入るわけですね。それで理解できました。

【島村】
ただし、テーラーメイドのディベロップメントプランを立てる中で、勤務地(国)が変わるような場合には、いつ戻ってくるかという点については契約できちんと決めるようにしています。「Repatriate(本国への帰任)がない、Expatriate(海外赴任)はない」というのが原則です。つまり、Expatriate(海外赴任)は、Repatriate(帰任)後に会社が本人にどのような期待をするか、それに対するディベロッププランとして海外でどのような経験を積む必要があるのか、という位置づけにしているということです。逆に、帰任後に向けてのディベロップメントと位置づけない海外勤務もあり、その場合は「海外への人事異動」ということで「Expatriate(海外赴任)」とは区別して、勤務地(国)のローカル社員として位置づけられます。

【楠田】
日本の企業を見ていると、そこがあいまいなケースが多いですよね。海外に駐在員として赴任したはいいけれど、戻ってきたときにポジションがなかったという話を、残念ながらよく聞きます。NIKIEではそのあたりの仕組みがきちっとできているから、総合的なTalent Managementができるのでしょうね。

【島村】
勤務地(国)の問題を除けば、毎年見直しが入るわけですが、それは個々人のキャリアプランだけではありません。5year aimed role & Development Planの対象となりうるポテンシャル人材であるか、Talent Pool自体にも見直しがかかります。

【楠田】
「ベンチ」の入替があるわけですね。

【島村】
はい。ビジネスの状況とその変化に応じた組織力・リーダーシップを先行確保するために、そのあたりは、かなりシビアに見ています。

次世代リーダー候補に必須な、Learning Ability, Learning Agility

【楠田】
ただ、そもそも誰に高いリーダーシップポテンシャルがあるのかを判断することは難しくはありませんか?

【島村】
おっしゃる通りです。言葉として条件を上げていくと、多分どこの企業でも当てはまるリーダーシップ像になってしまうと思います。ですから、そうした項目をチェックリスト的に使って、一番チェックの多い人をピックアップするという方法は取りません。現実的ではないですからね。実際には各部門と人事でポテンシャルを見る視点やレベル感を合わせながら、最終的には高いレベルでポテンシャルに対する信頼性を得られている候補を常にリストアップしています。

ただし、必ずチェックをするのが、Learning Ability, Learning Agility(学習能力・学習機敏性)です。学習能力が高い人は、リーダーシップに必要な要素を後からでも吸収していけるんですよね。ですから、最終的に選抜する際には、その人のLearning Ability, Learning Agilityのレベルを必ずしっかりと確認します。また、「この人は、Job Description(決められた職務記述書)の内容の範囲で仕事をしたい人なのか、それを自分から越境していきたい人なのか」を確認します。自ら越境していきたい人でないと、新しいことを学習しようなんて思わないですからね。

また、少し違った観点からポテンシャル人材を考えてみると、そこにもヒントがあります。Leaderとして期待されていた人物が脱落してしまう時というのは、High PerformerがそのままLeaderになろうとしているケースが多いんですね。そういう人は、自分がずっとHigh Performanceを達成してきたからか、他人に求めるレベルの高さが程度を超えて上がっている場合や、どのように仕事を進めていくかとか、遂行していくかという「How」ばかりに気を取られすぎて、どうやってチームメンバーをengageさせて、driveし、チームとして結果を出させていくかという視点を持てない場合が多いんです。どうしても、howからwhatという発想に行けない。ポテンシャル人材を考えたときには、こうした点も重要な要素になってくると思います。

店舗のアルバイトが、商品開発のグローバルのヘッドに

【楠田】
ここで日本での採用についてお伺いしたいのですが、NIKE Japanでは、新卒4月1日正社員採用は実施しているんですか?

【島村】
現在、基本的には、新卒4月1日入社のための採用は行っていません。ただ、「結果新卒」というのはあります。

【楠田】
結果新卒?

【島村】
NIKE Japanでは直営の小売店を持っているので、そこで働いている学生アルバイトも少なくありません。そのなかで、たまたま大学3年の終わりを迎えた学生で、実績を上げているし、将来のポテンシャルも見えるという人がいた場合は、彼ら・彼女らが大学を卒業するのを待って正式採用ということもあります。これが「結果新卒」ですね。

例えば、現在、あるスポーツカテゴリーのフットウェアの商品開発のグローバルのヘッドは日本人なのですが、彼は、国内のある店舗のアルバイトからスタートしたのです。

彼はとにかくシューズが好きで、店でも頭角を現して、先ほどいった「結果新卒」としてNIKE Japanに入社しました。その後、Job Posting(社内公募)で、Sample Coordinatorという仕事に自ら手を上げて、その店舗から日本の本社に異動しました。Sample Coordinatorというのは、商品開発を行うときのテストに使われるサンプルを準備する役割で、コアの仕事ではありませんが、靴の開発の近くにいることができるポジションです。彼はその中で学んだことを基に、新商品に対する自分の意見を表明するようになり、そのクリエイティブなアイデアが認められて、まず、狭いラインの商品開発のマネジャーに抜擢されます。その後、ポテンシャル人材として長期のキャリアプランを与えられ、様々な経験を経て、2年前に米国本社の今のポジションに就いたのです。

【楠田】
総合的なTalent Managementが実際に機能して、ポテンシャル人材を花開かせているんですね。すばらしい。

それにしても、これまでの島村さんの発言を伺っていると、単に「人事部長」というよりは、完全にビジネスパートナーとして発想していますよね。それはどういうところからきているんでしょう?

【島村】
まずは最初にお話したNIKEの文化の影響が大きいと思います。それに加えて、個人的に私がもともと商社の営業からキャリアをスタートさせたから、ということも影響しているかもしれませんね。5年間、鉄鋼部門で国内外の単位の大きい取引に携わっていました。その商社でその後、海外人事および労務担当に異動しました。そこでは全社にまたがる大きな経営課題との接点も多かったことも、今の視点を持つきっかけになっているのかもしれません。

【楠田】
ここで、島村さんご自身が日常どんな風に海外の上司・同僚と仕事をしているのか、お聞きしたいと思います。

【島村】
私の同僚になるのは、中国やヨーロッパなど各地域のHRのヘッドと、各Function、マーケティングやリテール部門などのHRのトップです。このグループは、Quarterに一回本社に集まってグローバルHRリーダーシップミーティングを持ちます。そのほか、このグループでは、2週間に一回テレコンファレンスを行っています。

【楠田】
そこではどんな話をするのですか?

【島村】
多岐に渡りますね。Talent Managementの話もありますし、具体的な組織の話がでることもあります。

詳細にはお話できませんが、例えば、あるfunctionの組織が成長戦略に対して十分Effectiveじゃないのでは?という問題提起がされて、それについて話し合うといった感じです。どこがボトルネックになっていて、どのようにそれを解消できて、何が変化のレバーになるのかなど、具体的に問題点をさぐり、解決策を考えていくこともあります。

また、ある国でのCompensation(報酬)レベルが十分競争力を持っているのかという課題が上がったこともあります。今よりかなり多く報酬を払わないと優秀な人材が流出してしまう恐れがあると。ではどのレベルだったら流出しないのか。そもそも本当に報酬レベルの問題なのか。など、様々なバックグラウンドと経験を持つ専門家が意見を出し合います。

私は、現在NIKE JapanのHRのヘッドの他に、Talent Acquisition(人材スカウト)部門のアジアチームのヘッドも兼任しているのですが、こちらも2週間に1回、同様のテレコンファレンスを行っています。

それから、先ほど申し上げたように、アメリカの上司と、週に一回のミーティングを、これも電話で行っています。

役員・部長クラスの仕事からオペレーション実務の仕事、修羅場まで、様々な場面を無理をしても経験せよ

【楠田】
思った以上に海外の同僚たちと頻繁にコミュニケーションを取っているのですね。では最後に、島村さんから、20代、30代のビジネスパーソンにメッセージがあればお願いします。

【島村】
20代、30代ということでしたら、無理をしてでも役員・部長クラスの仕事からオペレーション実務の仕事まで、多岐にわたった業務を経験した方がいいと思います。

役員・部長クラスの仕事というのは、ビジネスにインパクトを与えるような、全社的なプロジェクトといったイメージです。同時に、オペレーション実務、例えば人事業務で言うならば、ペイロールのような仕事も経験しておいた方がいいと思っています。役員・部長クラスの仕事を経験すると、「そんなルーティン業務はやりたくない」と考えてしまう人もいるようですが、プロになっていきたいなら、あらゆる仕事を無理にでも経験するくらいの気持ちが大事だと思います。

というのは、そうした経験を積んでいると、実際に役員・部長クラスのポジションに就いてから問題に直面したときに、どこが本当に現実的に解決できるポイントかが見えるんです。それが見えないと全体をダイナミックにドライブできないし、そうしないとビジネスにインパクトがある仕事ができないと思います。ですから、えり好みせずに、とにかく広く経験することを意識した方がいいいと思います。

また、あるときブレイクスルーした人を見ていると、必ず Tough Experience、修羅場を乗り越えていますよね。海外駐在をして誰にも助けてもらえない状態で新しい拠点を作ったとか、関係会社を閉めにいったとか。そういう状況を、歯を食いしばって乗り越えてみると、気がつかないうちに成長しているものです。是非できるだけ若いうちに、そうした経験ができる機会を、無理をしても取りにいってほしいですね。

【楠田】
本日はどうもありがとうございました。

(2010年8月/構成・文:インフォテクノスコンサルティング株式会社 大島由起子)

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