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ポスト2020の人材戦略
~″襲いかかる圧力″と″勝負を分ける一手″~

■ 執筆者 PROFILE
株式会社クニエ HCMチーム マネージングディレクター 喜島 忠典氏

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3. これからの人材戦略に必要なこと

(3)雇用の柔軟性を極限まで高めてモノを考える
これまでの雇用の常識をどれだけ早く捨てられるか、そしてその自由度の高い環境の中でどのように人材をオーケストレーションする技術を磨けるかは、今後、勝ち組企業となれるか否かの分水嶺になる。雇用の常識とは、例えば新卒一括採用、雇用の契約形態の差による仕事・処遇の格差、フルタイム勤務が基本形の雇用 等が挙げられる。

柔軟性を高めることによって実現できる世界をシンプルに言えば、「組織の目標達成のためには、人材の属性に関わらず、世界中から最適な人材を集めてモザイクのように積み上げる」ということである。

これからはパートタイムでも、業務委託契約でもいいから、自分達の計画に力を与えてくれる人材を呼び込むことの巧拙が論点になる。良い人材を正社員で採用しなければプロジェクトが進まないなどと言っていたら、何年たっても戦略が実行に移されることはない。

そのためには、将来「仲間」となり得る業界他社や進出先の国のキーマンに関する情報の蓄積や、関係構築への投資が当然必要になる。また、色々な人材が、スッと違和感なく最高のチームワークとパフォーマンスを上げられるような組織文化をつくらなければならない。「同じ釜のメシを食わなきゃだめ」というような価値観ではしんどくなるばかりだ。


(4)最適配置を追及する
人材の需給ギャップが逼迫する状況において、採用は当然大切だが、現在のリソースを最大限活用することの重要性はより高くなる。その中でも鍵は「適材適所」の実現だ。

適材適所を考えるべき場面は、新規に立ち上がるプロジェクトへのアサイン、組織のキーポジションを担うべき人材の検討、ケミストリー(化学反応)の良いチーミング等、幅広いものである。

適材適所を実現するためには、人材と仕事を深く分析する科学者の目線と、大量のデータを処理する技術が必要になる。そのためにはツールとしては、質の高いアセスメントの利用と、そのデータを蓄積・分析するシステムは必須になる。

ただ、現段階で適材適所にパーフェクトな解を出せるアセスメントはまだないし、そんなことができるようになるためには、相応に時間がかかるだろう。その意味では、既存のアセスメントを活用しながら、適材適所を実現するための「実験」を行う必要がある。その「実験」を繰り返して、自社としての人材の最適配置のロジックを探り出すことが必要になる。


(5)現場のパフォーマンスコンサルティングを実施する
最適な人材の配置をしても、人間同士の協働には様々な問題が発生する。持続的に組織をチューンナップすることの重要性はいや増していく。現在も一部の企業ではBP(ビジネス・パートナー)という役割で行われていることであるが、多くの企業においてその重要性が高まっていくだろう。

HRテクノロジーの進化で、デイリー、ウィークリーでのモチベーションの変化の把握や、時間単位でのパフォーマンスの可視化もさして難しいことではなくなってきた。ただ、集めたデータで分かった事実への対応を現場のマネジャーに負わせるのは、負荷が高すぎる。マネジャーが自分で各種データを見ながら効率的に組織マネジメントをしていく、いわゆるセルフサービスの流れは一層進むだろうが、同時に課題を抱えている組織を早期に発見し、マネジャーと一緒にメンテナンスしていく専門家の存在も同時に必要になるだろう。


5. さいごに

若干、リスクに着目しすぎた嫌いはあるが、ポスト2020年に向けて生じる変化と、人材戦略の予想される変化・力点に関して御紹介した。

人材戦略を実行して成果が出るまでには時間がかかる。リーマンショックの時のことを覚えていらっしゃる方も多いだろうが、あの時、危機に対する備えのあった企業は、なんやかんやで苦しいながらも悲惨な状況を駆け抜けられた。しかし、好況期に備えをしなかった企業は棒立ちになり、背に腹は代えられぬ状況下で賃下げ、リストラを選択した。私は、あの時の光景はできることなら見たくないと思っている。

ポスト2020年がどのような状況になるのかは分からない。しかし、人材戦略に影響を与える環境変化が起きることは、現在の目の前の事実を積み重ねれば容易に想像がつくことである。人事は常に、10年、20年先を考える視座が必要だ。皆さんの会社でそうしたディスカッションをする際に、本稿が一つのきっかけ、話題提供の素材となれば、筆者としては望外の喜びである。

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■ PROFILE
株式会社クニエ HCMチーム マネージングディレクター 喜島 忠典氏

大手コンサルティングファーム、商社の事業企画、人材サービス企業等を経て現職。「企業の戦略実行力強化」をテーマに、数多くの組織・人事改革のプロジェクトに従事。商社、製薬、製造、IT、小売等の企業に対して、変革期における組織・人材戦略のデザイン、各種人材マネジメントの仕組設計、およびチェンジマネジメントなどを手掛けている。